福岡匠研究会
TAKUMI
菊池畳製作所
菊池畳製作所 菊池 智徳さん
File01
住空間に新たな
チャレンジをめざす
畳業界の風雲児
菊池畳製作所 菊池 智徳さん

手仕事で「量産品」ではない
畳を作りたい

九州高速道の太宰府インターを下りると、菊池さんの畳工場はすぐそこです。明るく美人の奥さんとお二人で、我々取材班を出迎えていただきました。
菊池畳製作所は、現在、創業10年目。日々の資金繰りも厳しかった時代を経て、最近ようやく落ち着いて仕事ができるようになってきたとのことです。

菊池さんは宮崎県出身。宮崎市内の複数の畳工場でアルバイトをしながら職人としての腕を磨き、24年前に福岡に移転したそうです。福岡進出にあたり、テレビ西日本の『めんたいぴりり』を観て博多弁を勉強したのだそう。なかなかの戦略家ですね(笑)。
現在の畳業界はほとんどが機械による全自動生産に変わってしまっていますが、菊池さんは手を動かすことが好きで、手仕事を主体とした畳職人の道を選んだそうです。機械生産の畳は、素人が操作してもボタン一つ押せば出来上がっていくそうですが、畳を見ればすぐに量産品だとわかる部分があるそうです。そんな訳で、菊池畳製作唯一の機械は、年代物の畳裁断機でした。

菊池畳製作所 菊池畳製作所 菊池畳製作所

畳の原料である「い草」の代表産地は熊本県の八代地方。日本全国の生産量の8割~9割を担っています。昭和年代は広島県「備後産」のい草が最高級品だったのですが、その後衰退し、八代産が主流となりました。「備後の畳表」と言えば、最高級品というのも今は昔。そう、畳は衰退産業なのです。さらに現在は、中国産のい草が台頭し、国内シェアの5割以上が中国産になってしまっています。

菊池畳製作所

伝統の柄を生かした斬新なアイデアで高い評価
「博多献上柄 畳べり」

畳のもうひとつの重要な材料である「畳べり」で、菊池さんは2016年に福岡県デザインアワードに入選されています。それは、「博多献上柄」を使った畳べりです。
博多献上柄とは、福岡藩主黒田長政が徳川幕府に献上した絹織物の柄のことで、仏教と儒教に由来があり、花街の芸妓さんが舞台で締める帯に使われることで有名です。菊池さんはこの献上柄を畳べりに用いるアイデアを考案しました。
ところがこの献上柄、全ての柄が博多織の会社に版権があり、勝手に畳べりに使うことが出来ません。そこで考えた菊池さん、献上帯そのものを畳べりに使うことに。そうすれば、版権は発生しません。福岡商工会議所の後押しもあって、ようやく出来上がったのが、写真の「博多献上柄の畳べり」です。
福岡デザインアワードの受賞とも相まって、粋なお施主さんからのご依頼などもあり、随分製作したそうです。冷泉町の博多券番のディスプレイに敷かれた「うすべり」も、菊池さんの製作です。
この献上柄、手間はかかりますが、この仕事をきっかけに海外の方や、設計事務所の方と繋がりができたことが大きな収穫でした。

5色ともカラフルで素敵な柄なので、菊池さんは、もっと若い世代に広めたいと考えています。

現在の菊池さんの目標は、「畳」文化の復活と海外への展開です。フローリング一辺倒になってしまった日本の住宅に、新しい発想で「畳」を復活させたい。健康志向、サスティナブルなど、現代の住まいにフィットする特性を持ちながら、住宅空間から姿を消しつつある「畳」文化を取り戻すため、菊池さんは若い住宅コンサルタントの人たちとともに、ユニークなモデルハウスを計画しているとのことでした。
また、「日本」志向が強いヨーロッパなどに、日本の「畳」をネオジャパネスクな空間とともに売り込んでみたいという構想も、楽しそうに語ってくれました。そのまなざしは、まさに、チャレンジする畳業界の風雲児そのものでした。

最後に、取材班の要望に応えて、快く手縫い畳の技を披露してくれた菊池さんでした。手仕事にこだわる菊池畳製作所さん、ますます頑張ってください。

博多献上柄「畳べり」菊池畳製作所

2016年
福岡県デザインアワード入選
博多献上柄「畳べり」

菊池畳製作所菊池さん考案の博多献上柄の畳べり
菊池畳製作所芸妓さんが愛用する博多献上帯
菊池畳製作所畳べりの手縫いを気さくに実演
菊池畳製作所手縫い畳と機械縫い畳の違いを語る
菊池畳製作所今では貴重なアナログの畳裁断機
菊池畳製作所畳への思いを語る菊池さん
菊池畳製作所
事業内容
畳製造販売
代表者
菊池 智徳
会社名
菊池畳製作所
住 所
〒816-0912
福岡県大野城市御笠川6丁目3-5
電 話
092-984-1431
TAKUMI | FILE 01
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