建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師
グラスアート・TAKAMI 代表  高見 俊雄さん
2020.10.25
建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師

 

現代建築にマッチした
ステンドグラスを作りたい

 

高見さんの工房は、福岡市早良区の住宅街の中にありました。 庭がかわいい自宅兼用のアトリエです。 高見さんは1947年生まれ。 ステンドグラスの製作を始めて、もう40年以上。 ご本人は、近ごろは歳のせいか体力が・・・とおっしゃいます が、今、製作中の作品はかなり大きなサイズで、まだまだ気力が溢れているとお見受けしました。

高見さんは、戸畑生まれの久留米育ち。 地元の高校を卒業後、東京の長沢節モードセミナーで、ファッションデザインを学びました。 ファッションだけでなく、イラストレーター、広告、出版、ジャーナリズム、美術、実業界などに多数のクリエーターを輩出したビジュアル文化の拠点スクールです。 高見さんが創り出す、建築空間にフィットした独創的なデザインの原点は、ここにあるのです。

 

建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師
建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師

 

福岡に戻り、先輩のステンドグラス作家に誘われたのがきっかけで、この世界に入ったとのこと。 高見さん、ファッション業界での経験もあり、デザインのアイデアは次々と湧いてきたのですが、ガラスを加工する技術やそれを補強してゆく金属加工の技術が追い付かず、失敗の連続だったそうです。 ガラスの扱いはほとんど独学で、せっかく作った作品が、立てた途端に崩れたりして、困り果てて東京のガラス問屋までガラスのことを教わりに行ったりしていたそうです。

1982年、工房を開設。 高見さんは、開設当初から、現代建築にマッチしたステンドグラスを創りたいと考えていました。 当時のステンドグラスの主流は、重厚で、中世風の装飾性が強く、しかも高価・・・モダンな建築空間では、とても違和感を感じたそうです。 そんな中、バブルがはじけ、重厚で高価なステンドグラスの製作依頼が激減します。 すると、高見さんの幾何学的で、シンプルで、現代的なモチーフのステンドグラスは俄然注目され始めました。 材料や制作方法はホンモノなのに、現代の建築空間にマッチして、そんなに高価ではない。 モダン建築のお施主さまだけではなく、寺社関係からも依頼が来る状況になりました。

 

建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師
建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師

 

目指すのは建築空間と調和した
トータル空間アート

 

そんな高見さんの作品は、国内での評価も一気に上がり、1980年代、1990年代には、ステンドグラスのイベントで次々に受賞を重ねていきます。
‘85日本ステンドグラス・GS優秀作品大賞
‘86 日本現代工芸美術展入選
‘87 年鑑日本のグラスアート入選
‘89 名古屋デザイン博公募ステンドグラス入選
‘90 九州グラスアート展優秀賞

建築空間に寄り添う ステンドグラスの 魔術師

 

そして1991年からは、3年連続でアメリカのワールド・グラス・コングレスという世界の一流グラスアートを集めたイベントで作品を紹介されます。 また、2003年にはニューヨーク市の「パーセント・フォー・アート」に芸術登録されます。 メトロポリタン美術館では、高見さんの作品が掲載された書物を販売しています。 さらには、アイスランドで開催された「アーキテクチャル・グラスアート」という建築空間のガラス芸術15作品にも掲載されました。 地球の裏側のアイスランドでなんて・・・ビックリですね。

ステンドグラス製作に一番重要な色ガラスは、現在100パーセントが輸入品なのだそうです。 しかし、色ガラスは薬品を混入して作るので、環境問題上、欧米でも製造量が減少気味。手に入れるのがなかなか難しくなってきているのだとか。 それでも、高見さんのガラス材料棚には、長年蒐集した素敵な色ガラスが、たくさん置かれていました。

日本のガラスメーカーにもお願いして、厚みが不均一で窓ガラスには使えない不良品などを引き取ったりするそうです。 「ステンドグラスの魅力って、ガラスの厚みの変化によって微妙に移ろう光の表現ですよね」と高見さん。 プリズム断面のガラスで壁や床に虹を映し出す作品もあるそうです。

「ステンドグラスを建築空間に落し込んだ時、でしゃばらず、でも存在感があって、建築家が意図した空間の雰囲気を壊さない、そんな作品にするのが難しい」と語る高見さん。 高見さんのデザインの根底にある、トータルな空間アートの思想ですね。 住宅、和室、礼拝堂など、高見さんが関わった建築を見てゆくと、高見さんの作品に対する姿勢が若いころから全くブレずに、ますます研ぎ澄まされてきたのが、わかりますね。
色ガラスばかりで全体を構成するのではなく、透明ガラスをふんだんに使って、作品に透明感や清潔感を出し、現代建築にフィットさせているのも、高見さんの特徴です。 実はこれ、コストを下げるテクニックでもあるのだそうで・・・企業秘密でした(笑)。

「東日本大震災の時、茨城に納入したステンドグラスが、倒壊したのではと心配で問い合わせたところ、あの大震災の中、1枚のガラスも割れず壊れずでホッとした。 若い時から苦労して、独自の補強手法が本物だったことが証明できた瞬間だった」とちょっと満足げな高見さん。 「いつか、光とガラスで、大きなオーロラのような空間を創り出したい」と夢を語っていただきました。

最後に、ステンドグラスの一番大事な技術の一つである半田ごての技術を披露していただきました。 「若いころは、何時間でもやれたけど、最近は休みを取らないと体がもちません」。 そう語る高見さんですが、いやいや、匠な腕さばきではんだをつなぎ合わせて見せてくれました。

 

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「アーキテクチャル・グラスアート」 建築空間のガラス芸術 15作品にも掲載
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作品 “復活”
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M邸 “風の詩”
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宝海山 願正寺納骨堂 “水光の景”
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作品 “Crack#1”
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福岡市立南福岡養護学校 “天使達の組曲”
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S邸ゲストルーム天井 “輪の環”
事業内容:ステンドグラス制作
代表者:高見 俊雄
会社名:グラスアート・TAKAMI
住 所:〒814-0161  福岡県福岡市早良区飯倉7丁目10−6
電 話:092-707-7477